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動物園の経営上の崩壊、それを克服するために

 動物園の経営状況は多くは赤字である。特に県立、市立の動物園の多くは経営困難に陥っている。よく足を運んでいるとくしま動物園は平成23年度の資料によれば、年間2億円もの赤字が出ているようで、人件費を賄う収入すら得られていない状況であった。平日に訪れるとその日一日で来園客よりも動物園内で働く人のほうが多いという日もある。それに加え毎日のように光熱費、動物のエサも費用として加算される。よほどの工夫がない限り、平日に客を呼ぶのはむずかしい。特に真夏や真冬は来園者の足が遠のく季節である。

 徳島県外の動物園を見ても、八木山動物公園や、王子動物園など名だたる動物園でさえ赤字であり、黒字になっているのは公立の中では旭山動物園で5%ほどの黒字になっているようだ。ただ、これは懸命の改革の賜である。

 なお、私立の動物園については入園料の調整や動物園内で行われている様々なイベントにより場所によっては利益を回収できているようだ。


 公立で、最低限の経費が動物園に与えられているとは言え、動物園の飼育員たちは薄給に悩まされているのが現状で、狭き門である憧れの職についても、生活の維持の難しさから退職に追い込まれる職員があとをたたないようである。やめるまでいかなくても、給料が安ければ、仕事へのモチベーションは薄れ、飼育されている動物たちの管理もいきとどきにくくなるだろう。

 また、動物たちへの福祉はどうだろうか。日本の夏は今年の7月末の段階で36℃をこえる場所もある。このような酷暑ともいえる日本で暑さに弱い動物に冷房がつけられないまま、屋外でバテている姿をさらしているのである。また安く仕入れることができるウサギやモルモットは十分な獣医の診察が受けられないまま死亡するケースもある。治療するよりも購入したほうが安くつくからである。特に多頭飼育している様な場所では彼らが死亡したことすら告げられないことが多い。命の大切さ、ふれあいを学ぶべき場所なのに、動物によってはその生命があまりにも軽いということがままあるのだ。もちろんこれはすべての動物園がそうであるというわけではない。生まれた、また導入された園によって彼らが幸せに生きられるかどうかが決まってしまうのである。

 

 なぜこういうことが起きてしまうのだろうか。近年動物愛護法が改定されたためその状況は今後変わるかもしれないが、現在のところ、動物の管理に関しての一定のガイドラインが定められず、動物園によって動物への管理の仕方が異なるのだ。

 確かに、同じ種類の動物であっても必要な食事の量や性格などは違うため、臨機応変に対応されることが必要ではある。しかし彼らの生活を保証する最低限の基準は必要ではないだろうか。そしてその最低限の基準を遵守することすら費用や人員で困難を抱えているならば、それは動物園の経営がすでに破綻しているのである。

 こういった園でも来園者を呼び込むために、新しい動物を導入したりもするが、結局動物の数が増えることで維持費がかさばり、飼育員は多忙を極め、不幸な人間や動物が増えていくだけなのである。

 近年多頭飼育崩壊によってイヌや猫が保護されるニュースが流れてくるが、管理しきれないほどの動物を飼育しない、というのは家庭のペットだけの問題だとどうして言えるだろうか。同じ動物を飼育している動物園でそれがおきないようにするようなガイドラインはないのである。


 現在の問題点を嘆いてばかりいても仕方がない。この問題を解決するためにはやはり経営状況を改善するべきである。いくら公立で国からお金が出るとはいえ、年中赤字では、動物園が望むことを自由にすることもできない。

 私立と公立の動物園の性格を比較してもっともわかりやすいのは、園内でお金を落とさせる工夫が私立では十分にできているということである。

 カピバラやウサギなどにカット野菜が用意され園内で販売されている。その日に販売された量によってその後の食事の量を調整することでカロリーのとりすぎを防ぐことは可能である。

 ある園ではりんごの2,3切れを動物にあたえるのに現在300円を徴収しているが、ファンにとっては貴重な体験なので、お金を払ってしまう。そうでもない人にとってはそれほど価値のあることと思えないかもしれないが、ここで重要なのは、その動物を好きな人にたいして可能な限りのマーケティングを行っているという事なのだ。ちなみに以前は200円だった。値上がりしたということは、それだけの需要があり、またそれが供給を上回っていたということで、うまく価格調整がおこなわれているということが分かる。この300円という金額は単なる店にあるりんごの値段ではない。餌やり体験というイベントの参加料であり、材料費や人件費も含めたもの、そしてファンにとってはその動物への直接的な投資になるのだ。ファンはそれによって満足感を得られ、また来園したいという感想すら持つだろう。

 またグッズの販売も多彩である。一緒に写真を撮ってもらったり、それを特別なフレームをつけて販売しているところもある。これは私立に限らず、公立でも導入されてきているようだ。ただ、これは人員や来園者の多い都市部やある程度規模の大きい動物園だからこそできることでもある。

 入場料も私立は公立よりも高めに設定されているが、公立もマーケティング調査を行い、ある程度入場料で利益を回収できるようにするべきだろう。動物の管理が行き届いてないのは入場料が安いなら仕方ない、では済まされないことだと思う。入場料の適切な設定は立派な経営努力の一つであり、無料、または安くするならばそれを回収できるだけの工夫が園内でなされるべきなのである。

 ファンからの支援もうまく活用したい。現在ではクラウドファウンディングや欲しい物リストの活用で、その目的をうまくプレゼンテーションできれば支援者はあつまる。実際、園の消耗品や設備をそれで導入できた園もある。どうせ集まらないからと諦めずに、ファンが支援できそうな場所は提示しておくべきだと思う。

 ファンによっては掃除の時に得られるであろう動物の毛やフンでさえも、それが人間や動物にとって無害であるかぎり、加工すれば好きな人は購入する。うまく用紙などを配置して動物の手形や足形をとれば立派な商品になるだろう。動物を商売に利用することを忌み嫌う人もいるだろうが、彼らも動物園の一員であるならば、彼らが全く無理をしない範囲でならば、それに協力してもらうに越したことはない、というのが持論である。

 普段飼育場に入れない人間にとっては、そこに立ち入ることも大きなあこがれである。十分な衛生状態を保たせるために、特別な服を用意する、消毒する、事前に動物を怖がらせないための説明や、動物の移動、またできる日を限るなどして、動物の負担がかからないようにした上で、必要な経費+αを料金としてとり、飼育場の清掃やえさやりに協力してもらうこともできるだろう。少し高めに設定しても、ファンにとってはプレミア体験なのだから、収入源として期待できると思う。

 もっと簡単なところで言えば、人気のある個体のガチャガチャ、プロフィール付き写真などならば、売店や、レストラン、受付などある程度監視の目があるところ、動物の安全が保証できる場所(客が間違っても飼育場にケースを落としたりしないような場所)ならば、追加の人件費もかからない。

 動物はファンにとってはアイドルに等しい。ならば、アイドルが当然のように行っているようなことは同じように試してみれば良いと思う。赤字に窮しているならば、少なくともそれくらいの営業努力をするべきだと思う。


 今思いついたことを書き並べてみるとこれくらい出てきたが、これらのことのこと以外でも、収益を少しでも上げる方法は検討されているのだろうか。これらの企画を考えられるだけの人員を確保しているだろうか。いつもと同じ展示方法を延々と続けているだけでは経営状況が改善されないのは当然なのだ。経営状態が悪い。それは分かった。ではその原因はなにか。支出の大部分が人件費であるがそれは削減してはいけない。むしろ赤字の時点で支出の整理はできているはずだ。ならば利益を増やすことを考えるべきだ。営業努力は十分になされているのか。その動物を好きな人に対するマーケティング調査は十分に行われているのか。これは普通の企業ならば当然のことのはずだ。赤字でも国が補助してくれているから大丈夫、と何も変えないのであれば、何も変わっていくはずがない。動物の福祉や飼育員への十分な報酬のため、その動物を好きな人からお金を取る方法を考えてほしいのである。

 


 



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